はじめに:単爻分析から全局的構造への躍進
これまでの講義では、個々の爻の旺衰や動変に焦点を当ててきました。しかし、六爻予測の精妙さは、爻と爻、卦と卦の間に生じる「グループ関係」にあります。資料の「六合章第十九」「六沖章第二十」「随鬼入墓章第三十」では、特定の構造的組み合わせが現れたとき、個別の爻の生剋関係よりも、全体の構造的な力が優先されることが明示されています。
これらの構造をマスターすれば、次のような問いに答えられるようになります。「なぜ深く愛し合っている二人が別れるのか(合から沖への変化)?」「なぜ重病の淵にある人が危機を脱するのか(墓庫の沖開)?」「なぜ一見平凡な協力関係が大成するのか(三合局)?」
第一節:六合(りくごう)システム —— 事物の集結、安定、そして執着
「合」は、集まり、安定、遅滞、絡み合いを表します。占術において、合は通常「情がある」ことや「繋ぎ止められている」ことを象徴します。
1. 六合の基本的定義
地支六合:子と丑、寅と亥、卯と戌、辰と酉、巳と申、午と未の組み合わせ。
2. 資料に記された六つの合の形式
日月が爻を合す: 例として五月の占いで、世爻の子水が月建と合す。これは「合起(ごうき)」と呼ばれ、爻が弱くても引き立てられることを意味します。
爻と爻が合す: 卦の中の二つの動爻が互いに合す。
爻が動いて合に化す: 動爻が変化して出てきた変爻が、元の動爻と合す(化合)。
卦が六合に会う: 主卦の6つの爻が二つずつ合している(天地否など)。
六沖が六合に変ず: 主卦が沖で、変卦が合。これは「先難後易(初めは難しく、後に易しくなる)」を表し、最終的には調和します。
六合が六合に変ず: 終始安定していますが、泥沼のようになって抜け出せない状態を表すこともあります。
3. 筆者による深度解析:合の「動的ウェイト」
合中の剋(ごうちゅうのこく): 子丑の合(土が水を剋す)や巳申の合(火が金を剋す)などは「合の中に剋を遺(のこ)す」と言われます。用神が強ければ「合」として吉、弱ければ「剋」として凶と見なします。
実戦的意義: 求財や結婚は「合」を喜び(長久)、訴訟や不安は「合」を忌みます(問題が心に結びついて離れないため)。
第二節:六沖(りくちゅう)システム —— 事物の散乱、迅速、そして崩壊
「沖」は、離散、対立、急速、不安定を表します。
1. 六沖の基本的定義
地支六沖:子午、丑未、寅申、卯酉、辰戌、巳亥の相撃。
2. 筆者による深度解析:沖の「緩急」と「生死」
近病は沖に逢えば即ち癒え、久病は沖に逢えば則ち死す: これは資料中の極めて有名な断語です。新しい病気(近病)はエネルギーが強く、沖されることで病邪が散ります。しかし、長引く病気(久病)は元気が尽きかけており、沖されることで生命の根底が崩壊します。
六合から六沖への変化: 『増删卜易』において極めて不吉な構造とされます。「先には親しみ後には疎んじる」「始めは栄え終わりには衰える」の象徴です。
第三節:三合局(さんごうきょく) —— エネルギーの質的変化と規模
三合局(申子辰の水局など)は六爻における最も壮大な構造であり、多人数での協力、長期計画、あるいは強力なエネルギーフィールドを表します。
虚一待用(きょいつたいよう): 卦の中に二つの動爻があり、あと一つの地支が欠けている状態。その欠けた地支の日や月が巡ってきたとき、合局の力が爆発的に発動します。これは「いつ起こるか(応期)」を予測する際に驚くほど的中します。
第四節:随鬼入墓(ずいきにゅうぼ) —— 情報の封鎖と終結
「墓(ぼ)」に入るとは、情報が閉じ込められる、あるいは動きが止まることを意味します。
形式: 世爻が入墓する、本命が入墓する、あるいは動いて墓に化す。
筆者による深度解析:墓の真偽 野鶴老人は、古法が入墓を過度に恐れることを正しました。入墓は「死」ではなく、**「意識不明、入院、隔離、収蔵」**を意味します。用神が強ければ、それは一時的な停滞に過ぎず、墓を沖し開く(沖開)時を待てば良いのです。
第五節:実戦ケースの解析
ケース1:六合から六沖への悲劇(夫婦関係) 結婚生活のトラブルを占ったところ、主卦は合(調和)であったが、変卦が沖(決裂)となった。
判断: 始まりは仲睦まじいものの、最後には反目し合う。結果、不貞が発覚し、裁判を経て離婚に至りました。「合から沖へ」の鉄則通りの結末です。
ケース2:三合局「虚一待用」の精密予測(出世) 昇進を占った際、卦の中に寅と午が動いていた(寅午戌の火局のうち、戌が欠けている)。
判断: 「戌の日」に書類が受理され、抜擢される。結果、その通りになりました。合局は「タイミング」を計る上で独特の優位性を持ちます。
ケース3:随鬼入墓の転機(長輩の病) 夫の病を占った際、夫を表す爻が日の墓に入った。古法では「死」とされます。
判断: 夫の爻は月建から生じられて強く、墓に入るのは「意識が朦朧としている」だけである。墓を沖す翌日に意識が戻り、完治しました。
第六節:筆者による深度評価 —— 構造を単爻に優先させる「断卦のレイヤー」
大勢の優先: 長期投資や結婚では、個々の強弱よりも「合か沖か」という構造的な力が結末を左右します。
速度の優先: 六沖は速く、六合は遅い。急ぎの用事は沖を喜び、合を忌みます。
状態の優先: 入墓、旬空、月破は「三大欠陥」と呼ばれます。これらの欠陥が解消される時期こそが、事態が動く鍵となります。
第七節:構造的構造における「実戦応期」ガイド
合せる所は沖に逢う: 合している事は、沖される日時に実現する。
沖する所は合に逢う: 散乱している事は、合される日時に安定する。
入墓すれば沖を待つ: 墓に入っている事は、墓を沖し開く時に動き出す。
第八節:本章の高度実戦まとめ
合の心得: 合が常に良いとは限らない。何を合しているかを見よ。財を合せば集まり、鬼を合せば悩みとなる。
沖の心得: 沖が常に悪いとは限らない。病を沖せば治り、財を沖せば散る。
三合の配置: 現代のビジネスでは、三合局は「サプライチェーンの統合」や「チームの団結」を表します。
結び
六合、六沖、三合、そして入墓。これらは立体的な時間とエネルギーのモデルを構成しています。これらの構造を通じて、私たちは物事の裏にある執着や決別、そして帰着点を見抜くことができます。これは単なる予測術ではなく、万物の「聚散離合(集まり散り、離れ合う)」の法則に対する深い洞察なのです。
次章予告: 「第八章:象数結合:六神(六獣)の性格特徴と神煞の補助判断」。なぜ青龍が必ずしも吉ではなく、白虎が時に財となるのかを解析します。
