はじめに:縁占いの底層ロジック —— 陰陽、世応と財官のバランス
婚姻は陰陽の結合の体現です。『増删卜易』の予測体系において、縁占いは単に一つの「吉」の字を見るのではなく、以下の三つの次元からなる立体的モデルによって構成されます。
主役(用神): 男性が女性を占うなら「妻財(さいざい)」、女性が男性を占うなら「官鬼(かんき)」。これは相手の本体を表します。
関係(世応): 世爻(せいこう)は自分を、応爻(おうこう)は相手および相手の家庭を表します。世応の生剋沖合が、双方の交流パターンを決定します。
構造(卦体): 六合卦か六沖卦か、あるいは卦変の趨勢が、感情の持続性と最終的な結末を決定します。
資料によれば、野鶴老人は「財が旺じて父母を剋すれば不吉」といった古法の画一的な判断を厳しく批判しました。彼は「分占(ぶんせん)の法」を主張し、婚姻を占うなら婚姻に専念して論じるべきだと説きました。本章では、実戦性の高いこの縁断法を学んでいきます。
第一節:用神を取る芸術 —— 男占と女占の区別
正確な主役(用神)を選ぶことが予測の第一歩です。
1. 男性が女性を占う:もっぱら「妻財」を用神とする
財爻が旺相(強い)し、動いて吉に化せば、女性は健康的で賢明であることを表します。財爻が空破(無力)であったり、回頭剋(かいとうこく)に化したりすれば、縁が薄いか相手に災いがあることを示します。
2. 女性が男性を占う:もっぱら「官鬼」を用神とする
官鬼が世爻を生合すれば、夫に情があることを表します。官鬼が旺相していれば、夫に能力や地位があることを表します。子孫爻の発動(傷官)は、感情の阻害や夫へのダメージを意味するため、最も忌まれます。
3. 応爻(おうこう)の補助的役割
資料には「応は百歳の妻なり」とあります。財官が用神ですが、応爻は相手の「身体」と「家」を代表します。
財官が世を生じ、応爻も世を生じる:最上の吉。本人も家庭も協力的であることを意味します。
財官が世を生じるが、応爻が世を剋す:本人はあなたを好きだが、相手の親や環境が反対していることを意味します。
第二節:世応の交流 —— 相手の本心と関わり方を見抜く
1. 世応の相生相合
世応生合: 双方の心が通じ合い、コミュニケーションが円滑。
応が世を生ず: 相手があなたに尽くし、追いかけてくる。
世が応を生ず: あなたが相手に夢中で、進んで尽くそうとする。
2. 世応の相沖相剋
世応相沖: 性格が合わず、口論が絶えない。あるいは遠距離。
応が世を剋す: 相手が強く、あなたはこの関係で圧力を受けている。
世応ともに空亡: 「互いに真実(誠意)なし」。双方が本気ではなく、この縁談は幻に終わる可能性が高いです。
3. 六親持世(りくしんじせい)の現代的象意
兄弟持世(男占): 男性にとっての大忌。自分勝手で妻を剋す、あるいは経済力が不足している。
子孫持世(女占): 女性にとっての大忌。夫への不満、高い要求、あるいは現在は結婚の意思が薄い。
第三節:構造的判断 —— 聚散離合(出会いと別れ)の定め
1. 六合卦と六沖卦
婚姻占は六合を喜ぶ:相思相愛、末長い幸せ。
婚姻占は六沖を忌む:縁が散じやすく、たとえ結婚しても生別死別の恐れあり。
2. 合から沖へ、沖から合へ
六合変六沖: 最も恐ろしい構造。「最初は栄え、最後は枯れる」。当初は熱烈でも、最後は反目して離婚に至ります。
六沖変六合: 「先難後易」。当初は障害や誤解があっても、最終的に合意に達し、結ばれます。
第四節:現代のテーマ:離婚、復縁と不倫
1. 不倫と第三者の判断
「財官(ざいかん)多現(たげん)」は多重関係を表すことが多いです。
財爻が二つ現れる(男占): 一つは世と合い、もう一つは応と合う場合などは、正妻以外に女性がいることを示唆します。
応が他と合す: 相手の心がすでにライバルや第三者に傾いている。
2. 離婚の予兆
用神が回頭剋に化す: 縁が終点に達した。
世応が相沖して沖に化す: 双方のコミュニケーションが完全に断絶し、将来的にさらに遠ざかる。
3. 復縁の可能性
化退神(かたいしん)と復縁: 用神が退神に化すことは、離別者にとっては「元の状態に引き返す」意欲を表すことがあります。世応が相生していれば、復縁が期待できます。
第五節:実戦ケースの解析
ケース1:六合から六沖への奸案 ある男女の関係を占ったところ、卦が「六合から六沖」へ変化し、さらに世爻が日辰と「三刑(さんけい)」を作っていた。
判断: 感情が破綻するだけでなく、法的な制裁を受ける。結果、不貞が露見し、双方が刑罰を受けて離別しました。
ケース2:夫の外遇(不倫)と生離(離別) 女性が夫婦円満を占ったところ、子孫が持世し(夫を剋す)、応爻(夫)が財(別の女性)と合していた。
判断: 夫にはすでに親密な愛人がおり、子孫持世のため最終的に夫を失う。結果、翌年に離婚しました。
第六節:筆者による深度解析 —— 性格、外見と家柄の取象
容貌は六神にあり: 青龍なら優雅、朱雀なら活発、白虎なら威厳、玄武ならミステリアス、螣蛇ならスレンダーで神経質。
家柄は父母爻にあり: 父母が旺相し青龍を伴えば名家。衰弱していれば平凡な家柄。
徳は色相に勝る: 野鶴老人は「財官が旺相して世を生ずれば、容貌に関わらず良き伴侶なり」と説いています。
第七節:縁占いにおける「分占」の重要性
「相手に金はあるか」「容貌はどうか」「親は賛成するか」を一卦で占おうとすると、情報が混乱します。
分占の順序:
まず「この縁談は成るか」を占う。
次に「相手の品性と性格」を占う。
さらに「結婚後の両親への影響」を占う。
第八節:縁占いの十大実戦鉄則(まとめ)
男は財を、女は官を占う:主役を間違えるな。
世応生合は良縁なり:互いの合意が基礎。
六合変六沖は必ず離れる:初め良く、終わり悪しの定数。
世応ともに空なれば婚を求めるなかれ:誠意なく、虚礼に終わる。
財官多現は第三者あり:関係が複雑なシグナル。
子孫持世は女が夫を剋す:女占の最大忌。
兄弟持世は男が妻を剋す:男占の最大忌。
応が他を合せば心は外に向く:相手に別の意中の人あり。
用神化退すれば復縁すべし:破鏡重円の転機。
沖中に合に逢えば仲裁あり:トラブルあっても助けあり。
本章結語
『増删卜易』の婚姻観において、感情は単なる情熱で維持されるものではなく、「エネルギーのマッチング」と「構造の安定」によって成り立っています。世応の交流を通じて相手の本心を見極め、財官の旺衰を通じて関係の厚みを読み解く。これが幸せな結婚への道標となります。
