はじめに:功名予測の本質 —— 権力、文書と自己の交差点
『増删卜易』のシステムにおいて、仕事と功名の予測は「官(かん)」と「印(いん)」の結合として捉えられます。資料によれば、功名予測の核心は「官鬼(かんき)爻」(職位、権力、順位を代表)と「父母(ぶも)爻」(文書、組織、合格通知を代表)にあります。
野鶴老人は、名誉を求めること(求名)と富を求めること(求財)には本質的な違いがあると考えました。金運は子孫爻(財の源)を喜びますが、仕事運は子孫爻(官を傷つける神)を最も嫌います。このロジックは現代の職場でも驚くほど精緻に当てはまります。官鬼はあなたの役職、父母はあなたの雇用契約や所属組織、そして子孫はあなたの権威に挑み、職を奪おうとする要因を指します。本章では、職場の進退を見抜くための体系的な断法を伝授します。
第一節:仕事予測における六親(りくしん)の職能定義
現代の職場環境における各役割の定義は以下の通りです。
官鬼爻(用神): 職位、職権、上司、会社そのもの。官鬼が旺相(強い)していれば地位は安泰であり、空破(無力)であれば地位は名ばかりのものとなります。
父母爻(用神/印星): 合格通知、公文書、労働契約、資格証明。父母が世爻(自分)に持したり生じたりすれば、正当な身分と名声を得られます。
妻財爻(元神): 給与、福利厚生、官を養う資金。現代では、財が官を生じることは、その職位の給与水準が高いこと、あるいは実績(数字)によって昇進の機会を得ることを意味します。
子孫爻(忌神): 罷免、リストラ、反対意見、専門技術職、フリーランス。子孫が発動して官鬼を剋すと、失職や辞職を意味します。
兄弟爻(阻隔): 同僚、ライバル、職場の口論。兄弟持世(自分に兄弟がつく)は、職を他人に奪われるか、職場がトラブルに満ちていることを表します。
第二節:試験と選抜予測の核心ロジック
資料の「壹試章」や「郷試会試章」には、合格のための必須条件が記されています。
1. 官父同興(かんぷどうきょう)、金榜題名(きんぼうだいめい)
試験成功の理想は、官鬼と父母がともに強く、かつ世爻を生合することです。
官星(かんせい)が旺ずる: あなたの順位が上位であり、選抜される資格があることを表します。
父爻(ふこう)が旺ずる: 試験の出来が良く、合格通知(文書)が順調に届くことを表します。
父母が強いが官鬼が弱い場合、入学や試用期間の機会はあっても、正式な官職や肩書きを得られない可能性があります。
2. 子孫持世(しそんじせい)、落選の兆し
「子孫が世に持すれば、功名を問うことなかれ」。子孫は官を剋するため、子孫が発動したり世に持したりすれば、成績不振や何らかの理由による失格を意味します。
例外として、短期的な試験(2〜3日内)で子孫が「旬空」であれば、まだ官を剋せないため、一時的に合格することもありますが、長期的には不利です。
3. 兄弟奪標(けいていだつひょう)、成功し難し
兄弟爻はライバルを指します。兄弟が強く発動し、自分と官を争う場合、自分が落選の踏み台にされるリスクがあります。
第三節:昇進と職場の駆け引きに関する動的判断
1. 官旺生世(かんおうせいせい)、即座に昇進す
官鬼が持世して化進神(かしんしん)となる: キャリアが絶好調で、昇進を繰り返すことを表します。
官鬼が世を生じて青龍が臨む: 上司の寵愛を受け、名実ともに抜擢されることを表します。
2. 歳五生世(さいごせいせい)、貴人の引き立てあり
六爻において「太歳(たいさい)」は最高権力者(会長など)、「五爻」は君主の位(直属の上司やCEO)を表します。
太歳や五爻が発動して世爻を生合すれば、トップ層に認められ、異例の抜擢を受けるチャンスです。
逆に五爻の官鬼が世爻を沖剋(ちゅうこく)すれば、直属の上司を怒らせ、職場環境が極めて困難になることを意味します。
3. 世官が破れて休囚すれば、地位は長く持たず
世爻や官鬼爻が「月破(げっぱ)」や「旬空(しゅんくう)」に遭うと、権力構造が揺らいでいます。地位を維持できなくなるか、リストラの対象になる予兆です。
第四節:職場の危機と辞職の予兆
1. 子が旺じ子が興ずれば、退くべし
自ら辞職や引退を望む場合、子孫の発動を喜びます。子孫は官を剥ぎ取る神であり、これが出ることは仕事との縁が切れ、しがらみから解放されることを意味します。
2. 世爻が鬼に化し、回頭剋(かいとうこく)に化す
これは仕事占において最も凶い象意です。
世爻が官鬼に化す: 資料はこれを「化鬼(かき)」と呼び、仕事のせいで災難や病気を招くことを警告しています。
世爻が回頭剋に化す: 自分のミスや内部抗争によって、最終的に無残な結末を迎えることを意味します。
第五節:筆者による深度解析 —— 職場予測における「象(イメージ)」と「度(程度)」
官鬼持世でも昇進しないケース: 官鬼が世に持していても、月建で月破されていれば、権力は空洞化しており、まもなく免職されることを意味します。
父母爻発動の「異動」の象意: 現代では父母爻は「勤務地」や「社員証」を指します。父母が強く動く場合、昇進ではなく「部署移動」や「転勤」であることが多いです。
「納粟(のうぞく)」の現代的解釈: 古代の「財が官を生じる(金を積んで官職を得る)」は、現代ではビジネス公関(接待やコネ)による就職や、利益貢献度の高い民間企業での管理職登用と読み替えることができます。
第六節:実戦ケースの解析(資料より引用)
ケース1:県知事の異動の兆し ある県知事が今年の昇進を占ったところ、官鬼が月破であったが、父母が発動していた。
判断: 昇進は望めないが、父母(任所)が動いているため異動がある。結果、昇進はしなかったが、別の県の知事として転任しました。
ケース2:高校入試の「一点の差」 息子の高校受験を占ったところ、父母が発動して官に化したが、官鬼は暗動しながらも「旬空」であった。
判断: 潜在的な力はあるが、空亡しているため「半分しか力が発揮されない」。結果、成績は良かったものの「一点足りずに不合格」となりました。
第七節:仕事予測の十大実戦鉄則(まとめ)
官父同興は必ず名を成す:入社・試験のベストコンボ。
子孫持世は落選の兆し:職場での大忌。辞職や罷免を表す。
財旺じて官を生ずれば利名相随う:高給職や業績による抜擢。
父動けば主として単位を調じ換う:昇進ではなく部署異動。
五爻が世を生ずれば貴人の引き立てあり:直属の上司がキーマン。
官鬼の化退は権力の流失:引退間近、または権限縮小。
兄弟持世は同僚と争う:ライバルの妨害に注意。
世が鬼に化せば官非を防げ:地位がもたらす災いに警戒。
暗動の官星はサプライズ抜擢:予期せぬ昇進のチャンス。
空亡の官星は職位虚懸なり:名前だけで実権がない。
本章結語
『増删卜易』の知恵において、キャリアとは単なる職位の更替ではなく、個人のエネルギーと社会のルールの博弈(かけひき)です。仕事予測の核心は、「我(世爻)」「権(官鬼)」「名(父母)」の三者の関係を解き明かすことにあります。財の支えと子孫の破壊を読み取れるようになれば、職場でいつ進み、いつ退くべきかの道筋が見えてくるはずです。
